スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ミッシング・ガン/尋槍



STORY
警官のマー(チァン・ウェン)はある朝、二日酔いのまま身支度をしていたところ、ガンホルダーに収まっているはずの拳銃がないことに気付く。家中探しても見つからず、署の自分のロッカーにもないためますます焦るマー。そして彼は幼い息子のトンから、昨晩自分が妹の結婚式に出席していたことを知らされる。泥酔して何も覚えていなかった。マーは妹から借りた出席者名簿を頼りに一人一人尋ね歩くことに。だが、何の手掛かりも掴めないまま、ついにこの不手際が署長の耳に入る。そしてとうとう、マーの銃を使った殺人事件が発生してしまう…。
 
REVIEW
以前「西西可里/ココシリ」を鑑賞して、この監督ルー・チューアンに興味が湧いた。それで今回デビュー作「ミッシング・ガン」を鑑賞。

物語はある田舎の警官(主人公)が拳銃を紛失したことから始まる。そのうち紛失した銃を使った殺人事件が発生し主人公は捜査を続ける。そして、あまりにもあっけない結末で犯人がわかり幕を閉じる。

物語の流れはそんな単純な展開。単純な物語だから、退屈か?と聞かれれば、とんでもございません。
この物語の中に、追いつめられた人間の描写を上手く描いていて、そのうえでユーモアが効いている。


主人公の妻は子育てに悩み、夫は仕事人間で、夫婦はもはや夫と妻でしかない。その姿はありがちな家庭のひとつ。そんな夫婦関係が銃を無くしたことにより、主人公の元恋人が現れる。元恋人の存在により妻は不安と嫉妬で夫を責める。それは、妻が女を見せる瞬間。そういうドロドロした感情に臨場感が湧く。
そんな妻に口べたな夫は口数少なく、だけど誠実に答える「お前を裏切った事はない」と。その言葉を聞いて妻は涙するのだが、その涙は夫の誠実な言葉に泣いたのか、それとも、それでも不安で泣いたのか、自分自身の嫉妬の心に泣いたのか、たぶんそのどちらにも当てはまる気がする。そして、この場面から夫婦の心が近づいたように見える。

また、友人達にしても心配はしてるが、どこかで面白がっている感じ。結局「他人事」である。
主人公と友人達の温度差とか、諸悪の根元であるはずの友人の弟もどこか「他人事」なのだ。それが、現実的で自分にとっては大事だけど他人にとっては大した事には見えない。
皮肉的な印象だけど、そんな描写に何故か笑ってしまう。
きっと正直な人間の感情なんだろうなぁ。だから、なんだかヘンにクスッと笑ってしまう。
主人公の心境だけじゃなく、そういう場面ひとつひとつの対人間のやりとりが物語を面白くしている気がした。



それにしても主人公マーを演じたチァン・ウェンはとても雰囲気を掴んで演じているなぁ。物語の中ではマーのキャラクターは焦りや焦燥感が目に映るけど、マーという男の背景も上手く写しだしているように感じる。マーという男はきっと真面目で誠実な男だったんだろうって思わせる雰囲気を感じた。


この監督は面白い映像の撮り方をするなぁと思った。あと、音楽の使い方に若さを感じる。
冒頭、主人公が目が覚めガンホルダーに拳銃が無いところからオープニングが始まる。そこからの軽快な音楽とジャンプカットで興味が湧いた。
そして、主人公マーがひとり一人、捜査をしていく所の構図が妙に面白い。
例えば、劇団座長の友人を訪ねた時の二人の距離の撮り方とか、物語の中で現実と回想する所が入り交じる所とか、想像を映像化するところも印象的だったりする。
そういう撮り方なもんだから時々解りづらい構図になったりするが、それ以上に主人公の心の状態が解りやすくて物語に入り込みやすかった。

そして、印象的なのが風景。普段はのんびりと時が流れるような中国の片田舎が印象的。
主人公の焦る心情とノリのいい音楽に対して、道では牛が引かれ、農道があちこちに点在して、石畳の細い路地があって、人々はゆっくり時を過ごす日常。
このアンバランスさが、この映画を面白くしている要素のひとつだと思った。

終盤、主人公が、小学校の教師である妻と生徒である息子の所へ出向く。そして、そっと“ささやか”な贈り物をする。その時の主人公の決意に見ているこちらにまで覚悟が伝わる。寡黙で真面目な男が取った行動。
物語の最後に教室が見える隙間が映る。主人公が覗いたであろう妻と息子の姿に涙が出た。



ルー・チューアンという監督は人の愚を滑稽に時には残酷に映し出すけど、どこかユーモアがあって救いのある希望や安らぎもちゃんと見せてくれるなぁと思った。
物語はハッピーエンドで終わるような物語ではない。どちらかといえば、バッドエンドだ。
でも、主人公マーの最後の満面の笑顔。清々しさの残るあの笑顔が印象的でこれほど爽快感のあるバッドエンドをわしは見たことがない。


2001年/中国・アメリカ
監督:陸川(ルー・チューアン)
出演:姜文(チアン・ウェン)/寧静(ニン・チン)/伍宇娟(ウー・ユーハン)/劉小寧(リウ・シャオニン)/ワン・シャオフォン/シー・リアン/ウェン・シャオピン

Comments

natsuさん> 
この映画、作品として純粋に面白かったです。

私もまさか、中国映画であんな音楽を聴くとは思ってもみませんでした。しかも背景は田舎での物語なのに・・・
カメラの使い方といい音楽の取り入れかたといい、凄く洗練された感覚に陥りました。
この若い監督の感性は素晴らしいです。

チアン・ウェンは私も好きな俳優さんです。
「鬼が来た!」を観たときは、俳優さんとしての存在感といい、監督としても凄い才能の持ち主だなぁって思いました。
2年ほど前に… 
Ayuさん、こんにちは。
自分はこの映画を見てルー・チューアン監督の作品に興味を持っていたので「ココシリ」を鑑賞しましたよ。
その頃はいろんな中国映画を観ていたんですが、この映画は結構衝撃を受けました。まさか中国映画でこんな音楽を聴くとは思ってませんでしたし、舞台は田舎なのにどこかスタイリッシュな映像で!中国映画にも若い監督が登場して少しずつ変化してきてるのかもと思いましたた。それでも中国映画らしい人物の描き方や雰囲気は失ってなくて…良いものを残しつつ新しい要素を入れる。そんな感じが好きでした。

主演のチアン・ウェンも好きな俳優さんです。特に目が印象的。監督としても素晴らしいと思います。新作が楽しみです。

« »

05 2017
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
プロフィール

Ayu

Author:Ayu
香港、台湾、中国、中華圏の映画鑑賞ブログ
本拠地HP HK CINEMA RABBIT
雑記ブログ features_75file もどうぞ、よろしく

Comments+Trackback
Comments<>+-
Trackback <> + -
FC2カウンター
全記事表示リンク

Archive RSS Login
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。